海を見ていたジョニー

五木寛之作の小説「海を見ていたジョニー」の作品の中に登場する黒人少年兵士「ジョニー」が、ベトナム戦争で精神を病み、もはや自分にジャズを演奏する資格など無いと悩み、最後には海辺で自殺するという短編小説。

五木さんは京都のジャズ喫茶「YAMATOYA」をこよなく愛し、彼は幼いころ母親に連れられてある敵兵士「ロシア人」の口ずさむメロディーを聴くのである。五木さんは知る人ぞ知るジャズ評論家でもある。

五木寛之さんの書く小説の中で、ジャズが演奏されるシーンの描写部分は、音が聞こえてくる小説と言われるくらい追力があって臨場感があります。「ジャズは人間だ。よい人間だけが、他人を感動させることが出来る。人間が駄目になった時、演奏も駄目になる.....」 ジョニーの心の葛藤をもとにジャズは良い人間だけが演奏をやれるのかどうか、その追求が小説の中で展開されていきます。

ここで海を見ていたジョニー(講談社文庫い1−17)〈文庫)より抜粋を紹介する。
ここで作者が示す問いはシンプルだ。人の心の良し悪しと、芸術の良し悪しとは重なるのか、という問いだ。心地良い音楽はよく「天上の音楽」などと形容される。では、地上に生きる者は、そこに憧れるしかないのであろうか。もしくはジョニーのように絶望し切ってしまう外ないのだろうか。

芸術と倫理の問題は、冷めた目で「関係ないよ」と言ってしまうのがクレバーな対応であるかのような考え方が普及しているようだが、この本を読めば、かつてそのような考え方を疑問に感じた人がいて、その問いは今もまだ切実なのだということが分かるだろう。


ここで私のピアノの恩師である坂元輝トリオ(通称テリーハーマントリオで数々のLPをリリース)の過去を振り返り、陸前高田のジャズ喫茶「ジョニー」でのライブ録音を紹介する。
坂元輝ピアノトリオの1980年録音で、CDのタイトルは「海を見ていたジョニー」。五木寛之さんの作品と同名であり、坂元輝氏は演奏前に五木さんの作品全てを読み漁り、本が擦り切れるまで何度も読んだそうである。

この坂元輝氏のCDは、日本人復刻ブームの昨今、数多くの埋もれた名盤たちが世に出される中、その中でも内容、レア度も合わせて間違いなく上位にランクされている。坂元輝が盛岡のジャズ喫茶「ジョニー」に残した名演の記録と辿る.
 「レフト・アローン」
 「マイ・フェイヴァリット・シングス」
 「夕やけ小やけ」
 「枯葉」
選曲が優れていて日本的抒情性が溢れ、ほとばしる情熱、まさに魂の演奏!ジャズ批評2006年5月「和ジャズ特集」号の名盤200選にも紹介されている。私はこのCDの存在をかなり前から知っていたが東日本大震災でふと思いだしこのCDを入手しました。


ロングセラーを続けるこの「海を見ていたジョニー」は郷愁を誘う心地よいフレーズ、日本的抒情性、綺麗な和音、日本人離れをした即興演奏。テリーハーマンとして多くのラウンジ作品をリリースして、多くのジャズファンを虜にしている。
坂元輝氏は現在東京高田馬場のマンションと京都のジャズスクール(アン・ミュージックスクール)を新幹線で往復する生活を今も続けていて、数多くのプロミュージシャン(Jazz Vocalist,Jazz Pianist)を世に送り出してきた。しかし、ある日多忙のためか演奏活動はピタッと止めてしまっている。

もし、ジャズの現場に復帰すれば53歳の独身ジャズピアニスト坂元輝氏は、私のmusic promotion所属のピアニスト「今田あきら」も遥かに超越した存在になるに違いないし、多くのジャズファンがその日を待ち望んでいる。東京音楽大学作曲科卒の坂元輝の才能を私の手でもう一度名盤「海を見ていたジョニー」を超越させたいと密かに構想している最中である。坂元輝氏のLP「ブルーアランフェス」は私の愛聴盤でもある。

最後にこのCD「海を見ていたジョニー」をプロデュースした照井顕氏は盛岡でジャズスポット「開運橋のジョ二―」のオーナーであり、彼の夢を30年ぶりに実現させたのがCD「海を見ていたジョニー」である。私は胸騒ぎがして彼とコンタクトを取っていますがもしかしたらあの東日本大震災で帰らぬ人になったのかと思うといてもたっていられなくなります。照井氏のご無事を祈りながら筆を閉じます。
 

(筆:高田)


コメント
高田さん、ご投稿ありがとうございます。
私の読書の原点の一つが五木寛之でした。「さらばモスクワ愚連隊」とか「青年は荒野をめざす」とかを思春期に読んでました。・・・「ジョニー」もかつて読んだ記憶があるのですが、ジャズがモチーフなのにさほど印象に残っていなかったのはなぜんだろう?当時さほどジャズに目覚めてなかったためなんだろうかとか思いながら、高田さんのエッセイ読ませていただきました。

東日本の震災で未曾有の被害が出ましたが、ジャズ関係も例外でなく・・・現地の関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
  • しろくま
  • 2011/05/06 12:11 PM
本日「海をみていたジョニー」をプロデュースされた照井顕氏が健在である事が判明。最初のお店が(妻の所有物)津波によりすべてが消え去ったのがNPRのニュースに出ていましたね。(しろくまさんより)
彼は現在
Jazz&Live 開運橋のジョニー
〒020-0026
岩手県盛岡市開運橋通3-44
TEL/FAX:019-651-6150
にLive Houseを持っておられます。
近い将来坂元輝さんを連れて訪問することを約束。
  • 眦長暢
  • 2011/05/06 8:56 PM
高田さん、ありがとうございます。
久し振りに五木寛之を思い出しました。出てきた時は衝撃的でしたね。確かに、むさぼるように読みました。「風に吹かれて」というエッセイ集もありました。マイクモラスキーの「戦後日本のジャズ文化」では「ジャズを文章に出来る小説家」と評していましたが確かにその通りだと思います。うろ覚えですが、「恋唄」という小説でしたか、それ以降全く読まなくなりました。今になって、「ジャズの香りがしなくなったから」ではないかと思っています。それ以降読んでいないので、あるいは再びジャズの香りがしているのかもしれませんが。
  • 安田英俊
  • 2011/06/03 12:51 PM
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